相続した不動産を売却したら税務署からお尋ねが届いた!届く理由と対処方法を解説

  相続した不動産を売却したら税務署からお尋ねが届いた!届く理由と対処方法を解説

この記事では不動産売却後に届くことのある「お尋ね」という封書について詳しく解説していきます。税務署からの書類ということもあり、不安に感じてしまう方もいらっしゃると思いますので、万が一の時のためにも基本的な知識をつけて準備しておきましょう。

西出 早希
【執筆・監修】西出 早希

現在会社員として住宅営業をしており、その過程でお客様への土地提案、プラン提案など行っています。

【保有資格】宅地建物取引士

不動産を売却した後に「お尋ね」と書かれた封書が届く場合があります。
税務署が差出人となっているため、「何かしてしまったのではないか」と焦ってしまうのも仕方ないでしょう。

しかし、税務署から「お尋ね」が届いても慌てる心配はなく、内容を把握して対応すれば問題ありません。

今回は、不動産売却における「お尋ね」について、届く理由と対処方法を詳しく解説します。
税務署から「お尋ね」が送られてきた方はぜひ参考にしてみてください。

税務署からのお尋ねとは

「お尋ね」とは、税務署から個人に対して行われる、税金や確定申告に関する確認の連絡のことです。

「お尋ね」は手紙または電話の形式が多く、「お尋ね」を受けた場合には、税務署によって問われている項目に回答し提出する必要があります。

「お尋ね」と同じように、個人に対して確定申告の中身を問う「税務調査」がありますが、「お尋ね」は税務調査と異なり法的な回答義務がなく、また税務官が直接自宅を訪れることもありません。

しかし、その後税務署に不信感を抱かれないようにするためにも、しっかり回答することが推奨されます。

「お尋ね」と呼ばれる文書は、不動産売却を行った人だけに届くのではありません。
相続や贈与などでお金をもらった人、不動産を購入した人など、基本的に大きくお金を動かした人へ向けて送られます。

税務署は不動産の名義変更の情報や個人の預金口座の状況などを把握することができ、不審なお金の流れがないかを確認するのです。

不動産売却後に「お尋ね」が届く理由

税務署が調査をする理由としては、申告漏れや脱税などを防ぐため。
大きなお金が動くと、ほとんどの場合、なんらかの税金が発生する可能性が高く、税務署は目を光らせています。

たとえば、不動産売却をおこなった人に対して税務署が「お尋ね」を送るのは、不動産を売ったときの利益に対してかかる「譲渡所得税」という税金を払ったかそうでないかを、税務署が確かめたいからです。

不動産売却の際には、所有権の移転をおこないますが、その情報は税務署へ自動的に流れる仕組みになっています。

「お尋ね」が届く対象者は?

税務署はお尋ねの対象者の選定基準を公表していません。
一方で、不動産を購入した方や、不動産を売却した方で確定申告をしていない人に届くケースが多いです。
税務署は、所有権移転の情報と不動産業者からの資料を参考にして、「お尋ね」の対象者を絞っていると言われています。

確定申告がされていないと、税務署は本当に利益がなかったかどうか把握できないため、お尋ねの対象になることがあります。

「お尋ね」が届く時期

お尋ねが届く時期にはバラつきがあります。
不動産売却から約半年で届くこともあれば、1年以上が経過してから届くケースもあるようです。

いきなり税務署から連絡があるので、慌てる人も多いかもしれませんが、落ち着いて正しく対処すれば特に難しいことはありません。

税務署は、不動産の登記情報や確定申告の情報を把握していますので、次の章を参考に適切に対処するようにしましょう。

税務署から届く「お尋ね」の内容

お尋ねの内容としては、以下のようなことが記載されており、場合によっては金額等を証明する売買契約書などの書類が必要になります。

  • 売却された不動産の情報について
  • 売却された不動産の購入代金等について
  • 売却された不動産の譲渡価格等について

お尋ねの中身を確認したら、正しい回答をしてすぐに返送しましょう。

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「お尋ね」に回答するときの注意点

「お尋ね」は放っておかず回答する

「お尋ね」は法的な効果があるわけではないので、放置しても罰金や罰則があるわけではありません。

自分は正当な取引をして、きちんと税金を納めた。

そのような場合では、放置しておいても特に問題にはならないだろう、と思うかもしれません。

しかし、放っておくと逆に疑われて、催促の文書が何度も届くことがあります。
それでもずっと放っておくと、最終的に税務署がはいって調査をする「税務調査」が行われる可能性があるのです。

つまり、面倒なことになるのを避けるためにも、問題がないからこそ、最初からきちんとした回答をしておくのが無難だといえます。

ウソのない回答をする

「お尋ね」を記入するときは、最低限でも契約書、領収書、預金通帳などの書類を用意し、よく確認しながらおこないます。スムーズに回答するためには、契約のときの証拠書類をしっかりと保管しておく必要があります。

そして、偽りのない情報を記入するようにしましょう。適当に回答して後で数字が合わないということにでもなると、逆に疑われてしまいます。
税務調査をすればウソは絶対に分かることですし、申告漏れとみなされると追加徴税を受ける場合もあります。

分からなければ専門家にたずねる

「お尋ね」の回答に限らず、不動産に関する手続きや税金に関しては、不慣れなことや分からないことが多いものです。

だからといって、分からないまま雑におこなってしまえば後でトラブルになることもありますので、分からないことは専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

「お尋ね」の回答に関しては、税理士にお願いすることも可能です。

税理士は「書面添付制度」を利用することが出来ます。
書面添付制度とは、申告を行った申告書の保証書のような役割をしており、税理士がきちんと確認していますよという書面です。

書面添付制度によって、お尋ねの回答に関する質問は税務署から税理士に連絡が行くようになりますので、ご自身で回答する必要がなくなります。

不動産売却後は確定申告が必要?

不動産を売っても利益が出なかった場合、本来であれば確定申告をしなくても問題はありません。利益が出てないので税金もかからないからです。

しかし、税務署側としては「本当に利益が出ていないのかを確認したい」という理由で「お尋ね」を送ってきています。
そのため、売却益が出ていない場合は、きちんとした事実を記入すれば、それ以上の追及を受けることはありません。

しかし、疑われているのはあまりいい気持ちはしないものです。そのため、売却益が出ていない場合でも、確定申告をしておくことをおすすめします。

基本的に、「不動産売却をしたら確定申告をしておいたほうが良い」ということは覚えておきましょう。

確定申告が必要な場合

不動産を売却したことによって利益を得られた場合や、税金の特例を利用する場合は、確定申告の必要があります。

譲渡所得金額は以下の方法で計算できます。

譲渡収入 − (取得費+譲渡費用)

譲渡収入とは売却した実際の金額のこと。

取得費は基本的には購入金額のことですが、建物の場合は減価償却費相当額を控除した後の金額です。

減価償却費

建物などは居住等に利用することにより時間の経過とともに資産としての価値が目減りすると考え、この目減り分のこと。

一般的な木造住宅だと耐用年数は22年となり、22年経過した建物の取得費は0となります。

譲渡費用とは仲介手数料など、売却するために必要な費用のことです。

この計算式にて、譲渡所得金額がプラスになった場合に、確定申告が必要です。
譲渡所得税に関しては、マイホームを売却した際は3,000万円の特別控除が利用できますが、この控除を使う際は確定申告が必要なことを覚えておきましょう。

確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日までに行ってください。

譲渡所得があるにもかかわらず確定申告をしていなかった場合は、管轄の税務署で期限後申告をおこないましょう。

期限が過ぎても申告はできますが、日にちが経つと無申告加算税や延滞税などが発生することもあります。

申告期限を過ぎてしまった場合の税加算は次のとおりです。

無申告加算税:納税額50万円までは15%、50万円を超える部分については20%を乗じた金額が加算される
延滞税:遅延日数に応じた割合で課せられる。申告期限より日数が空くほど割合も大きくなる

申告期限から1か月以内に期限後申告をおこなった場合や、納税の意思はあったが申告を忘れてしまったケースでは、加算税や延滞税が免除されることもあります。

譲渡所得があったのに確定申告をしておらず、お尋ねが届いたときは、すみやかに管轄の税務署で手続きをおこないましょう。

確定申告が不要な場合

譲渡所得を計算してマイナスになった場合は、基本的に確定申告の必要はありません。

また譲渡所得があっても、給与所得者(年間収入額が2,000万円以下)で、金額が20万円以下だった場合も確定申告は不要です。

このケースでは、届いたお尋ねの内容に従って回答すれば大丈夫です。

利益が出ていない場合は、確定申告する必要はないのですが、税務署側からすると「利益が出なかったから確定申告をしなかったのか」、「利益があったけど確定申告しなかったのか」がわかりません。

こうしたことから、悪いことをしていないのにお尋ねがくる場合もあります。余計なトラブルを避けるためにも、不動産を売却して利益がある場合でも、損失がある場合でも確定申告すると考えるのがおすすめです。

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まとめ

不動産売却後の税務署からのお尋ねについてお伝えしました。

税務署からお尋ねがあると、何か悪いことをしてしまったのではないかと不安に感じてしまうという方もいらっしゃるでしょう。

しっかりと確定申告している方や、確定申告する必要がなかったという方は、お尋ねに対してきちんと対応すれば特に問題はありません。

一方、申告する必要があるのに申告していなかった方や、過少申告したという方は、納税が遅れれば遅れるほどペナルティが大きくなってしまいます。お尋ねの時点ですぐに対応することをおすすめします。

お尋ねに回答しても次の指示がないことがあるので、お尋ねが来た時点で、自分で判断して動くことが大切です。

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