不動産取引にまつわるエピソード集② 実例から学ぶ教訓と抑えるべきポイント

  不動産取引にまつわるエピソード集② 実例から学ぶ教訓と抑えるべきポイント

不動産取引におけるトラブルやリスクを回避するべく、これまであった不動産取引のケーススタディをご紹介していきます。特にはじめて不動産取引を行うという方には参考になる情報が多いかと思いますので、そんな方のお役に少しでも立てば幸いです。

加藤 隆二
【執筆・監修】加藤 隆二

渉外融資担当経験を勤続30年以上。 業績良好な事業性・個人ローン貸出取り扱いから業績不振・リストラ等での法人・個人リスケまで、融資関連の入り口から出口まで経験あり。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

不動産取引は誰でも素人です。

それは当然と言えば当然で、不動産を取引することなどは、一般の人であれば一生の中で一度か二度あるか無いか?の経験だからです。

しかし、だからこそトラブルやリスクもあるので、それらを回避するには知識を身に着けることが大事になります。

私は銀行員として、仕事の中で不動産取引は数えきれないほど、ほぼ日常的に携わり、またいろいろな経験もしてきました。

そうした中から感じた、不動産取引における注意点やポイントを、自分の経験談も交えながら解説していきます。

銀行員からのアドバイス〜リスク管理と長期的な投資計画

私は銀行員という仕事がら、不動産投資の融資にも関わってきました。

その中で、不動産の取引ではリスク管理と、そして特に不動産投資では長期的な投資計画が必要になってくることを常々感じています。

そのあたりを銀行員からのアドバイスとして解説していきたいと思います。

リスク管理:金銭的損失について

不動産取引では意図的であるなしに関わらず、リスクが常について回ると考えた方がいいと銀行員の私は考えています。

普通に(何をもって普通とするかもむずかしい定義ですが)しんなりと取引が完了するほうが珍しい、くらいの心持ちでいたほうが、リスクやトラブルに対するアンテナが高くなるからです。

不動産取引におけるリスクは、金銭的損失につながるケースが多いので注意が必要です。

たとえば、「不動産購入で『建物内部の残置物(家具、電化製品、その他)については撤去せずそのまま売買します』という不動産取引内容で家を購入した。

ところが見積もりしてもらったところ想定の3倍以上の費用が必要になることがわかったが、すでに取引が終了して自分の所有物になっていたので支払うしかない」といったケースがあります。

これも私が見た実例なのですが、あとになって多額な費用が必要になっても、すでにローンを借りて払ってしまったなら、追加の融資は難しいのが実態です。

そうなると自己資金を取り崩して払うか、高金利で条件の良くないローンの利用を考えるなど資金を準備する必要に迫られてしまいます。

しかも、追加費用を払わない限り自分の目的で利用することはできないので、まさに「引くに引けない状況」になる恐れがあるので注意が必要です。

残置物に似た事例で、売却された家に蝙蝠が巣食っていたことから裁判に発展した例があります【参考①】。

ちなみに残置物についての注意点は、自分が売主となって不動産取引する場合も同じです。

たとえば実家を相続したが自分には家があり、維持費も大変だし、普段の管理もできず火事になるなど近隣との間でトラブルになるなどのいわゆる「空き家問題」【参考②】もあるため売却したいと考えた場合です。

それまで人が暮らしていた場合、家具や家電がそのまま残されているケースも多く、自分で処分したり清掃したりするのも難しいわけです。

こうした空き家は、個人に売るのではなく買取専門の不動産業者に売却したり、「不動産一括査定」などのサイトを利用

したりして業者に売却するのも一つの考えです。

専門業者に売却する場合は、残置物がそのまま残っていても買い取ってもらえるケースが多く、もちろんその分「撤去費用」などで値引きされることはあっても、売ってしまえばいろいろな問題が一気に解決するからです。

ただし専門業者に売却する場合にも、残置物撤去費用については一切追加で売主に請求しないなどといった約束事をしっかり確認しておく必要があります。

参考①:国土交通省/不動産トラブル事例データベース/裁判事例/中古住宅内の蝙蝠の棲息

参考②:政府広報オンライン/年々増え続ける空き家! 空き家にしないためのポイントは?

法的問題

建築基準法をはじめとして、不動産取引と法律は切っても切り離せないほど密接に関係しています。

法律を調べたり勉強したりするのはおっくうだとしても、最後には自己責任になりますので、特に重要事項説明書に書かれている内容で不明な場合は納得がいくまで調べて確認する意識を持ちましょう。

たとえば私が見てきた法的問題としてのトラブル例では次のようなものがありました。

  • 「土地の購入時には間口が狭くても、あとから隣人の土地を一部通行できる(「私道の通行承諾」などと呼ぶ)ことになっていたはずなのに、隣人と通行の話がまとまらなかった(そもそも約束されていなかった)」
  • 「購入する土地のうち、道路に接する一部を市に寄付することで、建物建築可能になるはずだったが、市は『そんな話は聞いていない』として、道路に寄付することも、建物の新築もできなくなってしまった」

などのケースがあります。

こうした不動産取引におけるトラブルなどの実例は、公的なサイトでも検索することができますので、自分が実際に不動産取引を考えるときの参考にできます【参考③】。

中古住宅購入を検討していますが、その家の敷地は個人の地主が所有権を持ったままの位置指定道路に接しています。媒介(仲介)業者は「昨年、隣の家を媒介した時に、地主はその道路の利用や掘削を認める承諾書を書いてくれた。地主は高齢で書類作成を面倒がり、今度は頼んでも書いてくれないが、他の昔から住んでいる家の人たちは普通に通行しているので問題ない。」と言っています。媒介(仲介)業者の話を信じて、買ってもいいのでしょうか。

位置指定道路とは、道路法等によらないで築造する幅員4m以上の道路で、特定行政庁から位置の指定を受けたものをいいます。道路ですから通行に関しては一般の道路に準ずると考えられますが、所有者のいる私道の場合は、道路掘削時の承諾料を要求されたり、売却され所有者が変わってしまうこともあります。また銀行ローンの条件として道路の利用や掘削に関する承諾書が必要な場合もあります。紛争の防止のためにも地主に承諾書を出してもらうよう、再度お願いしてみて下さい。

参考③:一般財団法人不動産適正取引推進機構/不動産のQ&A/道路・隣地・法令上の制限等についての説明

市場の不確実性を意識した長期的な投資戦略

自分が一生住む家なら、あとになって気に入らないことがあっても自分たちが我慢すれば住む場合もあります。

しかし、将来的に田舎に移住するとか、投資物件であれば売却して手放すことも視野に入れる、つまり「出口戦略」を考えておく必要があります。

なぜかというと、不動産取引も一つの市場として流行り廃り(すたり)やトレンドというものがあるからです。

「土地を買ったあとに値上がりして高く売れる」などというのは、バブル期の夢のような昔話であって、通常の不動産取引では

  • 自分が買ったあとで、今度は売却するには買ったときの何割減になるか?
  • そもそも売れるのか?
  • 売れ残った場合、将来的にどうするか?
  • アパートなら子供に残せるのか?店舗なら他のフランチャイズに使い回しが可能か?

など「尻に火がつく」状態になる前から、常に出口戦略は考えておくべきです。

ちなみに観光地ではバブル前後にペンションなど欧風の建物が多く作られ、そのあとは和風で「離れ」などの旅館的な物件が流行りましたが、現在そうした物件が売りに出ているのは流行遅れだから売りに出ているとも言えるのです。

ちなみに、銀行はこうした売りの話にも興味を持って、いろいろと相談に乗ってくれることがあります。

それは物件所有者のあなたにではなく、その物件に投資する新しいお客を開拓したいからで、特に大手フランチャイズなどを誘致できれば、地元活性化につながり銀行の株も上がるからです。

【銀行員が不動産取引で出会った実例】2.不思議な話を2つほど

ここではすこしだけ不思議な話を2つほど紹介します。

ひとつは人づてに聞いた話でどこまで本当なのか?わからないケースと、私自身の不思議な体験で「信じるか?信じないか?は、あなた次第」といったケースです。

事件現場に遭遇してしまった銀行員

  • これは、不動産取引の融資申し込みがあり、売却される予定の個人宅を銀行員が訪問したときのお話しです。

    その家はすでに空き家だったのですが、敷地内部に立ち入る承諾も事前に取っていたため、その銀行員は門から中に入っていきました。

    しかし、何か得体のしれない異臭を感じて、その臭いは建物に近づくほど強くなり、自分で鼻を押さえないといがまんできないほど強烈だったそうです。

    通常、銀行などの不動産物件調査では、敷地や庭の内部に入って建物の外観や隣との境界、土地の傾きや未登記物件などを調査して、建物の内部に入ることはまずありません。

    このときの銀行員もあくまで庭まで入っていっただけなのですが、臭いの異常さから勤める銀行に連絡し、そのあと警察へとつながり大騒ぎとなりました。

    結局、空き家だったはずの建物内に死体があって、臭いはその腐敗臭だったようですが、事件なのか事故なのか?など顛末はさでかではありません。

    これは人づてに聞いたうわさ話の類なのですが、私の勤務する銀行内では昔から語り継がれている有名な話です。

撮影したはずの写真が無い!

  • 1つ目の話は都市伝説的なものですが、こちらは私自身の経験談です。

    私も不動産購入の融資申し込みがあり、大きな屋敷が建っていた跡地を買って分譲地にしたいという融資申し込みで現地調査に出向きました。

    その不動産取引では、重要事項説明書に「以前、土地上にあった建物所有者が自室で首吊り自殺した」といわゆる心理的瑕疵が明記されていました。私も気分的に気にはなりましたが仕事なので、現在は更地になっている土地をいくつかの方向から撮影して銀行に戻りました。

    そして物件の調査内容をまとめようと写真を見直したところ、ある方向から撮影したはずの写真だけ真っ黒で何も写っていなかったのです。

    その写真は、かつての家が建っていたであろう方向の写真だったのですが・・・

    周りに話しても信じてもらえないだろうし、またこういった「非科学的」なことがらは、下手に取引先に伝わると、銀行員が不動産取引を妨害したとも言われかねないので、結局私は自分の胸にしまっておきました。

    その後、土地は不動産取引も終わり、分譲されて新しい家に新しい住人が生活していますが、いまでも心の奥に引っかかっている記憶です。(信じるか?信じないか?は皆さんにおまかせします)

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まとめ

今回は、不動産取引の注意点やポイント、トラブル事例など銀行員からのアドバイスが中心となり、どちらかというと不動産取引への不安をかきたてるような部分も多くあったと思います。

しかし、正しい知識を持って、慎重に決断できるなら、決して不動産取引は怖いものでもヤバいものでもありません。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

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