市街化調整区域の土地売却|田舎の土地をうまく手放すための戦略とは?

  市街化調整区域の土地売却|田舎の土地をうまく手放すための戦略とは?

「市街化調整区域の土地って売れないの?」「相続した不動産が、市街化調整区域なのか知りたい。」そんなお悩みを解決すべく、この記事では市街化調整区域の不動産について詳しく解説していきます。

濱田 真理
【執筆・監修】濱田 真理

光回線のオペレーターの傍ら、WEBライターをしています。 通信系ライター時代にSEOについてのライティングを身に着け、以降宅地建物取引士の資格を活かして不動産系SEOライターをしております。 クライアント様には、毎回ほぼ修正なしで高品質の記事を納品できる点を高く評価いただいています。 分かりやすい解説と確かなエビデンスにより、信頼される記事の執筆が可能です。

【保有資格】宅地建物取引士

「相続した不動産が、市街化調整区域なのか知りたい」
「市街化調整区域の土地って売れないの?」
「市街化調整区域の土地の活用方法は?」

市街化調整区域の不動産について、こんな疑問や悩みを持っていませんか?

市街化調整区域の不動産は、地目が農地であれば売却は困難ですが、農地転用することで売却の可能性は高まります。

市街化調整区域専門の業者に買い取ってもらったり、キャンプ場や駐車場などで活用したりすることも可能です。

この記事は、市街化調整区域の基本から売却方法、注意点、売却しやすい不動産とそうでない不動産の特徴、売却せずに活用する方法まで、あなたの不動産の可能性を広げるための情報が満載です。

この記事を最後まで読んでいただければ、市街化調整区域にある不動産の価値を最大化する戦略が見つかります。

市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、都市計画区域の1つで、市街化を調整する区域です。

そもそも都市計画法では、国土を都市計画区域、準都市計画区域、都市計画区域外に分けています。

都市計画区域

都市計画区域は、都市計画法によりさらに以下の3つの区域に分けられています。

市街化区域 主に都市化が進んでいる地域。
住宅、商業施設、工業施設などの建築が
推奨され、積極的な開発が行われるエリア。
建築の規制は比較的緩やか。
市街化調整区域 都市化が進んでいる地域と自然環境が残る地域の中間。
無秩序な開発を防ぐための規制が設けられている。
新たな建築や大規模な開発には、都市計画の認可が必要。
非線引き
都市計画区域
都市計画が適用されない地域。
主に自然が豊かな地域や人口が少ない地域が指定される。
将来的に開発を進める区域だが個々の自治体の条例などに
よる規制がほとんど。建築許可申請は不要。

準都市計画区域

準都市計画区域は、将来市街地になる予定のエリアで、都市計画区域に準じた規制が適用されています。

都市計画区域外

都市計画区域外は、都市計画区域に含まれないエリアで、都市として総合的に整備、開発、保全する予定がありません。

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市街化調整区域の確認方法

市街化調整区域にある不動産を売ろうとする場合、事前に以下の4つの確認が必要です。

  • 土地の地目
  • 線引きの時期
  • 自治体の区域指定制度の有無
  • 開発許可が得られるのか

それぞれ解説します。

土地の地目

土地の地目とは、不動産登記法で決められた土地の用途のことで、国土は23種類の地目に分かれています。

地目が「宅地」であれば、市街化調整区域の場合、建築許可が必要ですが住宅などを建てられる可能性があり、売却には有利です。

「田」「畑」など農地の場合、農地以外での利用許可は得にくいため売却は難しくなります。

地目を確認するには、「市区町村名+市街化調整区域」などで検索するか、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん証明書請求」から取得できます。

線引きの時期

線引きとは、市街化区域と市街化調整区域を分けることで、昭和45年前後に各都道府県知事により行われ、県をまたぐ場合は国土交通大臣が行いました。

線引き前からあった建物がある土地は「線引き前宅地」と呼ばれ、建て替えや増改築が行えますが、線引き後に建築した家の建て替えには原則として許可が必要です。

建物が建った日付は「土地の全部事項証明書」の「登記の日付」欄に記載されています。

土地の全部自供証明書は、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん証明書請求」から取得可能です。

さらに各市区町村の役場で、いつ線引きされたかを確認します。

自治体の区域指定制度の有無

「区域指定制度」により、市街化調整区域であっても、各市町村が指定した区域内の土地であれば、誰でも住宅などの建築が可能になります。

区域指定制度の目的は、少子高齢化による集落の過疎化を抑制したり、集落文化、集落コミュニティの維持・活性化を図ったりすることです。

開発許可が得られるのか

市街化調整区域で家を建てる場合は、市区町村の長からの開発許可が必要のため、市区町村の役場で確認しましょう。

参考元:国土交通省|開発許可制度

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市街化調整区域のメリット・デメリット

市街化調整区域には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 価格が安い
  • 自然豊かで静かな環境が多い
  • 税金が安い

・デメリット

  • 住宅ローンが通りにくい
  • インフラが不十分
  • 農地の場合売買に許可が必要

それぞれ解説していきます。

メリット・価格が安い

市街化調整区域の土地は、かなり安くなる傾向があります。

開発制限があり、購入を希望する人が限定されるため、市街化区域に比べると1/2〜1/10の価格で購入可能です。

メリット・自然豊かで静かな環境が多い

市街化調整区域の多くは、自然豊かで静かな環境にあります。

むやみに市街化が進まないように、土地開発の制限をしているからです。

都会を離れて、静かな環境で暮らしたい方には魅力的な環境と言えます。

メリット・税金が安い

市街化調整区域の土地には、都市計画税の負担がありません。

都市計画税はその地域に暮らす人に必要な道路や学校を作るための税金であり、市街化調整区域にはその必要がないからです。

固定資産税は土地の評価額に1.4%をかけて計算します。

土地の評価額が低いので、市街化調整区域の土地では固定資産税も低くなり、税負担が抑えられます。

デメリット・住宅ローンが通りにくい

市街化調整区域の物件購入には、住宅ローンは使えない場合がほとんどです。

通常住宅ローンの支払いができなくなった場合、金融機関はその土地を現金化して融資した分を回収します。

しかし市街化調整区域の土地は評価額が低いうえに、簡単に売れないため、回収が困難になるからです。

デメリット・インフラが不十分

市街化調整区域では多くの場合、電気・ガス・上下水道といったインフラが十分整備されていません。

浄化槽の設置やプロパンガスなど、自力でインフラを整える必要があります。

自治体からの助成金制度や減税制度も、市街化調整区域では利用できない場合がほとんどです。

デメリット・農地の売買には許可が必要

農業以外の目的で使うために売却する場合、「農地法第5条の許可」が必要です。

農地法第5条の許可を得るには、農地法が定める立地基準と一般基準という2つの厳しい基準を満たす必要があります。

許可が得られない場合、農業委員会の許可を持つ農業従事者にしか売却できません。

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市街化調整区域で売却しやすい不動産と売却しにくい不動産

市街化調整区域では、売却しやすい不動産と売却しにくい不動産があります。

売却しやすい不動産

  • 許可を得て建てられた建物がある
  • すでに宅地利用されている
  • 市街化区域に近いか隣接している

売却しにくい不動産

  • 農地
  • 農家の住宅など無許可の建物がある
  • 浸水ハザードエリアなど許可が得られない

売却しやすい不動産

開発許可を得て建てられた建物がある場合、同じ用途・規模の建物であれば建て直しが可能です。

都市計画法第60条により、既に宅地として認められている農家の住宅、日常生活用品の販売や加工の業務用の建物がある場合、開発許可を得る必要はありません。

宅地として認められた土地に、都市計画法第43条に該当するコンビニや理髪店などを建てる場合は、許可を得れば建築できます。

市街化区域に近いか隣接していて、市街化区域と日常生活圏を一体化していると認められる地域で、50戸以上の建物が連なって建っている地域は、開発許可が下りる可能性があり、売却に有利です。

売却しにくい不動産

農地は「デメリット・農地の売買には許可が必要」で解説したように、農地以外で使う転用の許可が得にくく、買手は農家に限定されるため、売却は困難です。

市街化調整区域は、都市計画法第34条の立地基準を満たしていないケースが多く、開発許可が下りません。

また、昨今の頻発・激化する自然災害への対策として、市街化調整区域の浸水ハザードエリアについて開発許可がより厳格化されたため、浸水ハザードエリア内の売却はほとんど不可能です。

参考元:国土交通省|「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定

市街化調整区域の不動産を売却する方法

市街化調整区域の不動産を売却するには、以下のような方法があります。

市街化調整区域専門の
業者に買取を依頼
市街化調整区域専門の買い取り業者に
買取してもらえば、短期間で売却できるが、仲介より
安くなる場合がほとんど。
見積は数社に依頼し比較検討する必要あり。
地元の不動産会社に
仲介を依頼
地元の不動産会社であれば、農家や周辺の
開発計画などの情報を持っている場合あり。
専任媒介契約でないと、なかなか動いてくれない
こともある。
周辺の農家に購入の
意思がないか確認
直接契約の場合、契約不適合責任などの
トラブルに注意が必要。
空き家バンクに登録 地方公共団体のホームページなどで、空き家
物件情報を提供する仕組み。
所有者であれば原則誰でも利用可能。
オークションに出品 ヤフーオークションなど
オークションサイトに出品する。

上記のいずれかで売却活動をする際、事前に農地転用の許可を得ておくと、売れる可能性が高まります。

市街化調整区域の売買における注意点

市街化調整区域を売却する場合、以下のような点には注意が必要です。

  • 地目を確認:地目が農地の場合、農地転用の許可が必要。
  • インフラの確認:上下水道・電気・ガスなどのインフラが整備されていれば売却に有利。
  • 売買契約の特約:期限までに許可が取得できなければ契約解除という特約つきで売買契約を結ぶケースでは、許可の可否によってキャンセルになる可能性あり。

売買契約の際は、不動産会社に仲介を依頼すると経費は掛かりますが、書類の不備やトラブルを防げます。

市街化調整区域の不動産を売却せずに活用する方法

市街化調整区域の不動産を売らずに活用する方法もあります。

用途 概要
資材置き場 整地不要で貸し出せるケースも多い。
大型車両が進入できるか確認が必要。
ニーズのありそうな会社との契約が前提。
駐車場 未舗装の簡単な整地でも始められる。
ニーズがあるか確認が必要。
レクリエーション施設 ドッグラン・キャンプ場・ゴルフ場・貸農園などの
レクリエーション施設に活用可能。
墓地 長期的な安定収入につながる。
周辺住民の理解と住民への配慮が必要。
太陽光発電 整地は不要。
寿命が来て撤去する際に処分費用がかかることも要注意。

いずれも固定資産税は建物がないと上がりますし、ニーズがあるか徹底的に調査する必要があります。

まとめ

市街化調整区域とは、市街化区域周辺の地域で、無秩序な開発を防ぐため建物の建築や開発に規制を設けている区域のことです。

市街化区域に比べて、規制があり用途が限られるため、地価が安く買手を見つけるのも比較的困難です。

市街化調整区域には価格が安い・自然豊かで静かな環境・税金が安いなどのメリットがありますが、ローンが通らない・インフラが不十分・農地の場合売るのが困難などのデメリットもあります。

市街化調整区域の不動産を売却したり、活用したりする際は、どのような規制があるかや、どんな活用方法だとニーズがあるかなど入念に調査が必要です。

無許可で建物を建てた場合、農地法違反・都市計画法違反などで、原状回復・懲役・罰金などのペナルティが発生します。

市街化調整区域の売却や活用方法については、地域の不動産会社だけでなく、市街化調整区域専門の不動産会社など数社に相談することで、偏りなく情報収取できます。

この記事を参考にしていただくことで、ご自身の物件を効果的に売却したり活用したりする戦略を立てられる、ヒントにしていただけたらうれしいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考元:市街化調整区域の売買方法とは?注意点や売却前の確認事項も紹介
参考元:市街化調整区域を手放したい!売却・活用するにはどうすればいい?
参考元:市街化調整区域内の不動産を売却するには? 売却のコツを解説

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