相続の基礎知識と不動産登記について解説します

  相続の基礎知識と不動産登記について解説します

ケースごとに誰がどの割合で遺産を取得できるかを解説します。

西風 恒一
【執筆・監修】西風 恒一

大阪司法書士会所属。平成19年に司法書士資格を取得し、それ以降は実務に携わり司法書士歴14年で、司法書士業務のすべて分野に精通しております。

【保有資格】司法書士

相続の全体像を学ぶ

誰が遺産を相続することができるの?

民法典という法律に、人が死亡すると相続が開始する、と決められています。そして、誰がどの割合で遺産をもらうことができるのか(「法定相続分」)が規定されています。では、ケースごとに誰がどの割合で遺産を取得できるかを見ていくことにいたしましょう。

配偶者と子供”が相続人の場合

「配偶者が2分の1、子供が2分の1」の割合で取得します。配偶者は1人しかいませんから生存していれば必ず2分の1を取得する権利がありますが、子供は1人とは限りませんので、例えば3人いるのでしたら、2分の1×3分の1で子供1人の相続分は、6分の1ということになります。

子供がいない場合

配偶者がいるものの、子供がいない場合には、生存している配偶者と亡くなられた方の親が相続します。この場合の相続分は、「配偶者3分の2,親3分の1」の割合で取得します。

親が両方とも亡くなっていれば次に祖父母の代になりますが、こうなると多くの場合、すでに亡くなっており、上の世代には生存者がいないことになります。 そうなりますと、次に亡くなられた方の兄弟姉妹にいきます。この場合、配偶者と亡くなられた方の兄弟姉妹の相続分は「配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1」の割合で取得することになります。

代襲相続とは

次のケースではだれが相続人になるでしょうか。

画像の説明文

この場合は、Cさんがもらうはずだった相続分をその子(EさんとFさん)がCの立場で取得することになります。つまり、1つ世代を上にあげて相続させることになるのです。

これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。具体的な相続分は、 Bさん2分の1、Gさん4分の1、Cさんがもらうはずだった分4分の1をEさんとFさんで分けます。すなわち、分母をあわせますと、「Bさん8分の4、Gさん8分の2、Eさん8分の1、Fさん8分の1」が法定相続分ということになります。

相続財産に含まれるもの・含まれないもの

では、相続の対象となる遺産とは何を指すのでしょうか。

まずは、わかりやすいものでいえば、預貯金・不動産・株などの有価証券・車・貴金属などのプラスの価値のあるものが挙げられますが、これはとてもわかりやすいかと思います。

では、仮にお父さんが借金を残して亡くなられた場合はどうなるのでしょうか。 残念ながら、これも相続の対象となります。つまり、相続人がお父さんの代わりに支払わなければなりません。相続人とは、プラスもマイナスも関係なくすべての権利も義務も受け継いでしまうことになるのです。

生命保険金はどうでしょうか。保険は契約者(亡くなられた方)が保険金の受取人を指定していますね。例えば、奥さんを指定している場合には、奥さんがすべての保険金を受け取ることになります。

つまりこれは相続対象財産とはならず、指定された受取人が相続財産とは別に固有の財産として受け取る権利を持つ財産になります。

その他、仏壇やお墓などは相続財産には含まれず、例えば長男さんが仏壇やお墓を管理する慣習になっているのならば、その方が承継することになります。その長男さんが亡くなられたらまたその長男さんなど、先祖代々受け継がれていくものとなるのですね。

そのほかにもやや理解しにくいものもありますが、上記を知っていれば一般的な相続財産は理解できるかと思います。

法律で決められた割合でないと遺産を分けられないの?

ここまで誰がどのような財産を相続するかを説明してきました。 では、法定相続分の割合にかならず従う必要があるのでしょうか。実際は、話し合いで相続する人を法定相続分ではない割合に変更して取得するというケースの方が一般的です。

例えば、お父さんが亡くなってお母さんと子供2人がいる場合に、子供2人は実家からすでに独立しており、お父さん名義の不動産には現在はお母さんしか住んでいない、またほかには特に分配する遺産もないというような場合には、不動産名義をお母さん単独にする方がよい、ということもあるかと思います。

そのような場合には、相続人3人で話し合って、「お父さんの遺した不動産は、お母さんが1人でもらうことにしましょうよ」と決めることができます。これを「遺産分割協議」といいます。この「遺産分割協議」によって、実態にそくした形の割合で相続分を決めるケースの方が多いといえます。

親の借金も支払わないといけないの?

さて、相続の対象となる遺産に含まれるものの中で、借金などのマイナスのものも相続するということを確認しましたね。では、これを免れる方法はないのでしょうか。

たとえば、100万円程度の借金であればなんとかなるかもしれませんが、数千万円の借金があった場合、これを返済できなければ結果的に、破産手続きをしなければならなくなります。これはあまりに不合理ですよね。これを免れる方法はないのでしょうか。

実は「相続放棄」という制度があります。これは、“相続開始を知った時から3か月以内”に家庭裁判所に相続放棄を申し立てなければなりませんが、これが受理されますと、「その相続には一切無関係」となります。もちろん、無関係ですから、プラスの財産があったとしても受け取ることはできなくなりますが、借金の返済義務は免れることになります。

不動産の相続を学ぶ

不動産の名義を変更するとは?(相続登記の必要性)

では、相続が開始した場合、その亡くなられた方(「被相続人」といいます)が不動産を所有しておられた場合に、その相続人への名義変更登記は必ずしもしなければならないのでしょうか。次のケースで考えてみましょう。

例えば、お父さんが亡くなられて、お母さんと子供が2人いらっしゃる場合には、お母さんと子供2人が相続人となり、お父さん名義の土地と建物があるとした場合を想定します。

ここは実家であり、お父さん亡き後は、お母さんが1人で住んでいましたが、駅から遠い立地のため、高齢のお母さんはすでに駅前のワンルームを借りて年金暮らしをしています。また、子供2人はすでに独立してしまって、実家であった上記の土地・建物は、現在は空き家になっているのですが、このまま置いておくと毎年固定資産税だけがかかってしまい、また不動産価値も年々下がってくるので、今のうちに売却して、売買代金を相続人3人で分けようという話になりました。

そこで、お母さんが、近くの不動産屋さんに売却相談に行きました。すると、不動産屋さんは不動産の登記簿を取得してそれを見ながら「このままでは契約できないのですよ」と言いました。

これはどういうことでしょう。お父さんはすでに亡くなられていますから、亡くなられた方名義の不動産を直接買主さんへ移転することができないのです。このようなケースはよくあります。

その場合には、不動産屋さんにお付き合いのある司法書士を紹介してもらうか、ご自身で司法書士を探されるか、またはご自身で登記申請のやり方を調べて申請するか、いずれかの方法を取り、まずは相続登記の申請をして、ご存命の方の名義にする必要があります。

ただ、どなたの名義にするかということも考えておく必要があります。この場合に、3人の名義にしてしまうと、原則として売却する際に3人がそろって契約しなければならなくなるため、相続人の話し合い(これを「遺産分割協議」といいます)で、どなたかおひとりの名義にして、お1人が売却手続きをするということもひとつの方法となります。

例えば、上記の不動産が大阪の不動産で、お母さんは大阪に住んでいるものの、長男は東京に住んでいて次男は福岡に住んでいるような場合には、売却の契約をするのに大阪まで出向かなければならないため、大阪にお住いのお母さん名義にしておくほうがスムーズですね。

さて、話を戻しまして、上記のような事情がない場合には相続登記をしなくとも罰金が来たりはしないのでしょうか。答えは。「今のところは大丈夫です」となります。

「今のところは」というのは、このたび土地に関しての相続登記を義務化し、一定期間内に相続登記がされない場合には罰金がかせられる法案が国会で成立しました。

では次に、この法案の内容を分かりやすく説明していきます。 これまで実に長い間義務化されていなかった相続登記の義務化の背景にはどのような理由があるのでしょうか。上記で説明した相続関係の例では、お父さんの名義の不動産があり、相続人が3人だけであるため特に問題はありませんが、これが地方の山林であり、名義人がものすごく前の世代のご先祖様であったような場合を考えてみましょう。地方の山林は土地の評価額がたった数千円ということも多いです。

数千円の土地の名義をご自身がもらうことを考えてみるといかがでしょうか。先ほどの例では、都市部である大阪の不動産ですから、いくらでも買主は見つかると思いますが、地方の数千円価値の山林を相続登記したとしても、はたして買ってくれる人はいるのでしょうか。

かなり難しいのではないかと思います。であれば、誰も引き継いでくれる人がおらず、長い間放っておかれることも理解できるかと思います。また、人は必ず亡くなりますから、長い間ほっておくと、どんどん相続人が増えていき、もはやだれが相続人で、それを収拾するためにどうやって相続人全員に連絡を取ればいいかもわからない複雑な関係性になっていますよね。

このようにして、日本には実質的な所有者不明の土地が増え続けてきました。所有者不明のまま置いておくことの損失額は日本で総額6兆円以上にもなるそうです。そこでこのような損失を解消していく対策として、今回の法改正に至ったというわけです。

この法案は、まだ実施日は決まっていませんが、2024年中には施行されることになっています。その法案では、強制的に相続登記を強いる代わりに、今までのような厳格な手続きを一部緩和することで、相続登記がしやすくなっています。

今回は細かい具体的な内容は割愛しますが、土地に関しては相続登記をしなければならなくなる、ということですね。

相続登記のために用意する書類とは?

では、実際に相続登記を申請するにあたり、どんな書類を集めなければいけないのか、およびなぜその書類が必要なのかを見ていくことにいたしましょう。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

戸籍は、出生の時に基本的には親の本籍地に入ります。その後、結婚すると夫婦の戸籍を作成したり、別の本籍地に変更したり、また法律による改製があった場合に新しく戸籍が作成されます。

それを、被相続人が出生したときのものから死亡するまでのものすべてを漏れなく集めることからスタートすることになります。

なぜ、それが必要かというと、すべての戸籍を集めないと、その方の人生で相続人になるべき人が誰なのかを証明できないからです。登記申請の場合は、生殖年齢である13歳程度からの戸籍がそろっていれば登記申請ができるのが基本ではありますが、銀行の相続手続きでは出生からのものを求められる点や13歳前後のものを取得できたならば多くの場合は出生時のものを取得することはさほど困難ではないため、出生時のものから集めることをお勧めします。

相続人全員の戸籍謄本(現在のものだけ)

相続人は、被相続人よりも長く生きていなければなりませんから、発行日が被相続人の死亡日以降の戸籍謄本が必要となります。

被相続人の戸籍の附票

登記簿上の住所が、Aという住所で登記されていたとします。この場合に、被相続人とこの登記簿上の名義人が同一人物であることの法務局の判断基準は、「住所と氏名が一致すること」です。

なので、登記した後に住所を移転した場合には、今までの住所の変遷が記載された証明書を添付しなければなりません。「戸籍の附票」とは、ある本籍地にいる間に住所を何回か移転しても、その住所の変遷が記載されている書類です。「住民票の除票」というものもあるのですが、これは前住所しか記載されないため、例えば、登記簿上の住所がAでその後Bに住所を移転して、そのままBで死亡した場合には、住民票の除票を取得すれば、前住所の欄にAが記載されています。

これが、A→B→Cと移転し、Cで死亡した場合には、住民票の除票を取得しても、前住所に欄にはBしか載らないので、戸籍の附票を取得する必要があるのです。「戸籍の附票」や「住民票の除票」は、基本的には死亡して5年経過すると廃棄処分されるため、5年以上経過してから相続登記をする場合には、登記簿上の住所を証明する書類がもはや添付できないということになります。

この場合には、法務局の運用としては、役所に廃棄されたことを証明する「廃棄証明書」を発行してもらい、これと被相続人が登記した際の「登記済権利証」を添付することで、登記できるものとなっています。

不動産を取得する相続人の住民票

相続登記にかぎらず、不動産登記では新しく名義人になる場合は、住民票を添付しなければなりません。理論的には住民票を添付すれば、「架空の人物が名義人になる恐れはなくなるだろう」ということになっているからです。

遺産分割協議書+印鑑証明書(相続人全員分)

法律で定められた相続分割合(法定相続分)以外の割合で分配する場合には「遺産分割協議」をしなければならず、相続登記をする際には遺産分割協議の内容を記載した「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し実印を押印します。

その印鑑が実印であることを証明するために相続人全員の印鑑証明書も添付しなければなりません。(不動産をもらう立場の相続人の印鑑証明書は、つけなくとも登記はできるのですが、遺産分割協議書は大切な話し合いの証明ですから、全員の印鑑証明書をセットでそろえる方がよいと考えます。

基本的にはこのような書類を漏れなくそろえて、登記の申請書を作成すれば、法務局に申請する書類はそろうことになります。

相続登記は誰がどのようにするのか。

書類の収集はなんとかご自身でできたとしても、込み入った事情のような場合や必ずしも基本的な相続登記とはかぎらないため、司法書士に相談することをお勧めします。司法書士は、登記のスペシャリストですから、細かい部分も含めてしっかりアドバイスして書類作成してくれると思います。

一例をあげますと、先ほど例に挙げたような、便宜上相続人のうちの一人の名義にしてから売却し、売買代金を相続人全員で分ける、といった場合に、遺産の分割協議書では遺産を一旦相続したのですから、それを売却すると、理論上、売買代金はすべて不動産を相続した人のものになるはずです。にもかかわらず、それを他の相続人に分配するのは、相続ではなく贈与にあたるとも考えられます。

贈与は、110万円までは贈与税がかかりませんが、それ以上の額になりますと贈与税がかかってくるのです。しかしながら、不動産の取得が売却して売買代金を相続人間で分配することを前提に、遺産分割協議をした場合には相続の一環と判断されることとなっていますので、遺産分割協議書にはその記載方法を工夫することを要します。

このように、遺産分割協議書の作成には専門知識が必要となる局面もかなりありますので、ここは注意が必要となります。

こんな場合どうするの?

認知症の相続人がいる

相続人の中に認知症の方がおられる場合には、その方を含めた遺産分割は原則として無効になります。意思能力がなければ法律上の話し合いはできないであろうと判断されるからです。

このような場合には遺産分割協議はできないのでしょうか。法律にはこの場合の手続きも規定されています。

まず、その方の代わりに法律面の判断や財産管理をしてくれる人を家庭裁判所に選任してもらうように申し立てをします。この代理人のことを「成年後見人」といいます。申し立てから選任まではだいだい3~6か月程度かかります。

また成年後見人制度の注意点は、遺産分割協議が終わっても成年後見人の役目は終わらず、その認知症の方がお亡くなりになるまで続きます。

また、成年後見人の財産の中から裁判所が報酬額を決定し、成年後見人に報酬を付与しますから、亡くなるまではずっと報酬を支払うことになります。さらに、成年後見人は認知症の方が不利益を被らないために選任されていますから、原則として、遺産分割協議で「その方の相続分はもらわないことにする」といった協議は家庭裁判所が認めることはほとんどなく、不動産名義はもらわなくとも、その相続分に相当する金額は他の相続人に請求するなどの方法が取られることが多いです。(「代償分割」といいます)

未成年の相続人がいる

“認知症の相続人がいる”で解説した認知症の方と同様に、判断能力の乏しい未成年者を含めた遺産分割も無効となります。

このような場合には、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てて、その「特別代理人」遺産分割協議を代わりに行うことになります。

この場合も、成年後見の場合と同様に未成年者に不利益になるような話し合いは認められないこととなります。2022年4月1日より、民法上18歳以上を成年とする法改正が施行されますので、この「特別代理人」を選任する局面は減少するのではないかと思います。

会ったことのない相続人がいるや連絡を取っていない相続人がいる

いざ遺産分割協議書しようとした場合に、「子供のころに一度会っただけ」や「異母兄弟のため、会ったことがない」などの相続人が登場することがあります。

このような場合には、連絡先が分からないので、遺産分割協議に至るまで時間と労力を要することになります。電話番号は調べようがありませんから、唯一の情報である戸籍をたどって、現在の本籍地の「戸籍の附票」を取得することにより、住所を知ることができます。

ただ、この場合、役所に請求する場合には「ともに相続人であり、相続手続きをするために必要なので発行してください(利害関係人からの請求)」と申請書に記載するなどの工夫が必要となります。

現住所が判明すると、そこにお手紙を送り、事情を説明することになりますが、必ずしも返事があるとも限りませんし、不動産の相続分を譲ってください、という核の部分を切り出すのは非常にデリケートな局面になるのではないかと思います。

一つの方法としては、「その方の相続分にあたる金額を渡す代わりに不動産の名義をいただきたい(代償分)旨の内容の話に持っていくことが考えられますが、相続人とはいえほぼ赤の他人ですから、切り出し方はやはりデリケートなものとなってくると思います。

韓国籍の相続登記

最後に、難しい相続登記としては、外国籍の方の相続ではないかと思います。外国籍で多い案件が韓国籍の方の相続です。

簡単に説明しますと、韓国には、かつて日本と同様の戸籍制度がありましたので、比較的日本と同様な書類収集作業にはなります。

2008年1月1日からは戸籍制度から証明書制度に法改正されたため、証明書の形式は日本の戸籍とはかなり異なりますが、相続関係を判断できる書類ですので、収集自体は比較的難しくはないかと思います。韓国の戸籍・証明書は、領事館で取得できます。

ただ、ハングルで記載されていますので、ハングルが読めなければその場で出生から死亡までの物がそろっているのかどうかを判断できず、いったん翻訳に出さないといけないので、時間と費用が掛かります。また、被相続人の住所のつながりを証明する「戸籍の附票」が韓国にはありませんから、 「外国人登録原票」という書類を法務省あてに請求して取り寄せなければならないケースが多いです。

その他の国の相続登記の場合は、このような相続人関係を証明する公的書類がありませんので、法務局と相談しながら進めるなどの個別対応が必要となることが多いかと思います。

まとめ

今回は、不動産の相続を中心にみてきました。

これらの内容を知っておかれるだけで、かなり専門家に近い知識になりますので、仮に司法書士に相談されるような場合にも、内容の濃い相談ができますし、ご自身の身近に相続が開始した場合には、手続きの流れがわかるので、最初から調べるよりはかなりの近道になるかと思います。今回の記事がみなさまのお役に立てますと幸いです。

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