不動産売却時に必要な登記についてわかりやすく解説

  不動産売却時に必要な登記についてわかりやすく解説

本記事では不動産の売却時に必要な「登記」という手続きについて解説していきます。不動産の権利を守るために必要な手続きになりますので、不動産の売却を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

西出 早希
【執筆・監修】西出 早希

現在会社員として住宅営業をしており、その過程でお客様への土地提案、プラン提案など行っています。

【保有資格】宅地建物取引士

土地の売却をすると、登記という手続きが必要になります。登記は、不動産の権利を守るために必要な手続です。

すぐに登記を行わず放置していると、購入した不動産の所有権を第三者に主張されると言ったトラブルが起こりうる可能性があります。このようなトラブルを防ぐためにも登記は正確に、かつ迅速に行いましょう。

この記事では、不動産の売却時に必要な登記について解説します。登記にはどのような必要性があるのか、またかかる費用もあわせて解説しているので参考にしてください。

不動産の売却で必要になる主な登記

不動産の売却では、売主から買主へ不動産の所有権を移動するために、主に

  • 所有権移転登記
  • 抵当権抹消登記

が必要になります。

一つずつ確認していきましょう。

①抵当権抹消登記

高額の不動産を購入するときには、銀行などの金融機関からローンを借り入れることが多いのではないでしょうか。

この借入れをするときには、借入れをする人が万が一ローンを払っていけなくなった場合に備えて、金融機関は購入した不動産に対して抵当権を設定します。

この抵当権とは、支払いが滞った際に金融機関が不動産を売却して融資したお金を回収する権利を示すものです。

そして、ローンの支払いが終わっていない不動産には、この抵当権が設定されていて、抵当権を抹消しないと売却できません。

さらに、抵当権を抹消するにはローンを完済する必要があるため、一般的には売却益をローン返済に充てるか、自己資金で完済しなければなりません。

この流れをまとめると、

  • 不動産のローン完済
  • 抵当権抹消登記
  • 引き渡し

ということになります。

買主は、不動産の購入にローンを利用する場合はあらためて抵当権を設定する必要があります。

②所有権移転登記

所有権移転登記とは

所有権移転登記とは、土地や建物の所有者が変わったときに行う登記のこと。土地や家を購入したときに、売主から買主へ名義を変える手続きです。

所有権の登記を行うことで、第三者に不動産を所有しているという権利を主張できます。

土地の売買の場合は土地だけの所有権移転を行いますが、中古住宅の場合は土地、建物それぞれに登記をおこなう必要があります。

また、所有権移転は買主から売主への決済(売買代金の支払い)と同時に行うのが一般的です。

所有権移転登記がなぜ必要なのか

土地や建物は、実際に使用している人が持ち主とは限りません。

土地や建物自体に所有者の名前を書いているわけではないので、所有者本人やその土地を使っている人以外には誰が所有者なのか分からないのが一般的です。

たとえば、親名義のまま子どもが家に住み続けているケース。

この場合、親名義のままでは、子どもは家を売れません。

所有者である親が売却するか、親がすでに亡くなっている場合は「相続登記」等を行い、家の名義を親から子どもに所有権移転する必要があります。

売主が負担する登記費用と必要書類

まず、ここでいう登記費用とは、「登録免許税」と「司法書士手数料」の2つの費用を示します。どちらも登記にかかる費用なので「登記費用」としてまとめて扱われることが多いです。

登録免許税

登録免許税は、各種登記手続きの際に国に納める税金のこと。税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて計算します。
原則、現金納付ですが、税額が3万円以下なら収入印紙で納付することも可能です。

司法書士手数料

登記の代行を司法書士に委託した場合に支払う手数料・報酬額を司法書士手数料といいます。司法書士事務所によって額が異なるため、詳しい金額を知るには売却を依頼した不動産会社や司法書士に相談をしてみると良いでしょう。

そして、売主が負担する登記については、以下のようなものが挙げられます。

  • 抵当権抹消登記
  • 住所変更登記、氏名変更登記
  • 相続登記

一つずつ確認していきましょう。

抵当権抹消登記

抵当権抹消登記とは、売主が購入当時等に利用したローンに設定されている「抵当権」を外す登記のことです。通常は売買と同時に物件から抵当権を外します。

登録免許税:不動産1個につき1,000円
(土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合は2,000円)
司法書士手数料:10,000円〜15,000円程度

なお、抵当権抹消登記に必要な「弁済証書」や「解除証書」「抹消登記委任状」等の書類は金融機関が用意します。

住所変更登記および氏名変更登記

不動産登記簿に記載されている所有者の住所や氏名について、転居や婚姻(離婚)等により現在の住所・氏名と一致しなくなった場合には、登記の変更手続きをすることになります。

お住まいの町で住居表示が導入されたり、町名地番変更等により、登記簿の所有者住所の記載が現在の住所と異なることとなった場合にも、住所変更登記をすることになります。

令和3年4月に不動産登記法が改正され、住所・氏名変更登記が義務化されることになりました。実際に法律の効力が生じる日(施行日)は「公布後5年以内」となっているため、令和8年4月までに施行される予定です。

そのため、抵当権抹消登記や売買・贈与等による所有権移転登記をする場合には、その前提として所有権登記名義人の住所や氏名の変更登記が必要になります。

住所変更登記、氏名変更登記それぞれの必要書類および登記費用については下記で確認しておきましょう。

住所変更登記の必要書類

  • 住民票または戸籍の附票(現在の住所と登記簿の所有者住所との関係性がわかるもの)
  • 住居表示実施または町名地番変更等の場合は、自治体発行の当該証明書
  • 依頼者(所有者)の運転免許証等身分証明書(住所・氏名・生年月日の記載があるもの)
  • 司法書士への登記委任状

住所変更登記費用

・登録免許税    不動産の個数×1,000円
・司法書士報酬0,000円~20,000円(税抜)
                                 郵送料、交通費等(実費)

・その他登記簿閲覧および登記簿謄本取得実費

氏名変更登記の必要書類

  • 戸籍謄本および住民票(本籍の記載あるもの)
  • 依頼者(所有者)の運転免許証等の身分証明書(住所・氏名・生年月日の記載があるもの)
  • 司法書士への登記委任状

氏名変更登記費用

・登録免許税    不動産の個数×1,000円
・司法書士報酬10,000円~15,000円
                                 郵送料、交通費等(実費)

・その他登記簿閲覧および登記簿謄本取得実費

相続登記

不動産の相続による所有権移転登記手続きについて、手続きの流れ・必要書類・費用等について解説します。

これまで、不動産の相続登記は現在は義務ではありませんでしたが、令和3年に法律の改正がありました。

令和6年4月1日から相続登記を3年以内に行うことが義務付けられています(令和6年4月1日より前に開始した相続にも適用されます)。

まず、相続には三つのケースがあり、
「遺産分割協議による相続」「法定相続分による相続」「遺言による相続」があげられます。

まずは、相続登記に必要な書類は以下の通りです。上記のケースに応じて申請に必要な書類も異なりますので、一つずつ確認していきましょう。

相続登記をする際に必要な書類

  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 収入印紙
  • 登記申請書
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

遺産分割協議による相続の場合の必要書類

「遺産分割協議」とは、相続人全員が集まって「誰がどの財産を取得するか(分割するか)」を決めることをいいます。

遺産分割協議が合意に達しないと相続登記できないため、全員が納得する相続となるようにしっかりと話し合うことがポイントです。

遺産分割協議がまとまると「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名をし、実印を押します。

遺産分割協議による相続登記の場合、以下の書類が追加で必要になります。

  • 遺産分割協議書
  • 相続人(複数いる場合は全員)の印鑑証明書

法定相続分による登記の場合の必要書類

「法定相続分」とは、民法上で決められた相続人のとり分の割合のことを指します。この割合に従って相続を行った場合、相続登記に必要な書類は最小限にとどまります。

つまり、「必ず用意しなければならない書類」がそれに該当しますので、追加で書類は不要です。

遺言による相続の場合

被相続人の遺言によって法定相続人が不動産を取得した場合、必ず用意しなければならない書類に加えて「遺言書」が必要です。

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。

このうち自筆証書遺言、秘密証書遺言に関しては家庭裁判所の検認手続きが必要です。

一方、公正証書遺言の場合は検認の必要はなく、謄本の提出でもかまいません。

これをまとめると、下記の表のようになります。

検認手続きの有無
自筆証書遺言
秘密証書遺言
公正証書遺言 ×

「検認」とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状や訂正の状態、日付署名など検認の際における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

相続登記の登記費用

・登録免許税
固定資産評価額×0.4%

・司法書士報酬
①登記1件につき40,000円~(税抜)
    ②遺産分割協議書作成 10,000円~(税抜)
    郵送料、交通費等(実費)


・その他登記簿閲覧および登記簿謄本取得実費

・書類収集等実費(下記書類等取得の際、役所等に支払います)
登記簿謄本、登記簿閲覧、固定資産評価証明書、戸籍・除籍・原戸籍謄本、住民票、附票等

買主が負担する登記費用と必要書類

所有権移転登記

不動産の売買時には、売主と買主が共同で所有権移転登記を行います。

実際には、売主と買主の引渡しの場に司法書士が立ち合い、決済(代金の支払い)を見届けた後、代理で移転登記を行う場合がほとんどです。

タイミングとしては、売買契約締結の約1〜2か月後の引渡し日に、移転登記の手続きを行うのが一般的。

また、買主が住宅ローンを利用する場合は、ローンを借り入れる銀行で決済を行うのが多いです。

所有権移転登記の必要書類

ここで、売主が登記において用意する書類についてもご紹介します。

売主が準備しなければならない所有権移転登記時に必要な書類は次のものです。

  • 登記済証(権利証)または登記識別情報通知書
  • 実印
  • 印鑑証明書(過去3か月以内のもの)
  • 固定資産税評価証明書
  • 住民票
  • 住宅家屋証明書等

買主は、司法書士にもよりますが住所を確認できる住民票、書類に押印するための認印などが必要になります。

所有権移転登記費用

・所有権移転登記の登録免許税
土地 固定資産税評価額×1.5%
    建物 固定資産税評価額×2%
 (ただし、建物については買主の居住用建物で一定の要件を満たす場合は0.3%)


・司法書士報酬
売買契約書等作成 50,000円~(税別)
    所有権移転登記申請代理 40,000円~(税別)
    日当、旅費、通信費等(実費)


・その他書類収集等実費

地目変更費用

「地目」とは、現在の土地の用途を示すものです。そして、土地の地目変更登記の申請を行うのは、土地の用途や状況が変わったときです。

家の場合、地目が「宅地」でないと家を建てられません。

農地の状態である「田」や「畑」などの場合は農地転用を行ってから、「雑種地」などの場合は「近いうちに建物が建つことが見込まれる状態」になったタイミングで申請します。

お住まいの地域を管轄する法務局により異なりますが、上水や下水の配管を道路から敷地に引き込んだ状態である等、「近いうちに建物が立つことが見込まれる状態」であれば宅地への地目変更を申請できます。

地目変更の登記費用

地目変更登記を専門とするのは、「土地家屋調査士」と呼ばれる資格を持った人です。土地家屋調査士に依頼する場合は、1筆あたり5~6万円が相場。土地が複数ある場合は、1筆当たり2~3万円程度追加されるイメージです。

上記の金額は、単に土地家屋調査士に登記手続きの依頼をする場合です。

地積測量図を取得する場合や、現地調査のための交通費が必要になった場合は、それらの諸費用も依頼主が負担することになります。

地目変更の必要書類

地目の変更申請をするのは、購入した土地を管轄する法務局です。

申請時に提出する書類は下記のとおりです。

  • 地目変更登記申請書:法務局の窓口で取得、またはホームページからダウンロード
  • 現地地図:地目を変更する土地の場所がわかる地図、住宅地図など
  • 農地委員会発行の許可証等:農地を宅地等に転用する場合に必要。農地転用許可証、または転用受理の通知・非農地通知書
  • 住民票または戸籍謄本
  • 印鑑

地目変更登記申請書を記入する際、所有している土地がどの地目に該当するのか、どの地目に変更したいのかを明記する必要があります。

土地の地目は、現況と利用状況によって決められ、下記のとおり分類されています。

(1)宅地 建物の敷地およびその維持もしくは効用を果たすために必要な土地
(2)田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(3)畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(4)山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(5)原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(6)牧場 家畜を放牧する土地
(7)池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(8)鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口およびその維持に必要な土地
(9)雑種地 以上のいずれにも該当しない土地

参照:土地の地目の判定|国税庁

抵当権設定登記

金融機関から住宅ローンを借りて不動産を購入する場合、金融機関は借主がローンを返済できなくなった際に備えて、その不動産に抵当権を設定します。

仮に、借主がローンの返済ができなくなると、抵当権が設定された不動産は金融機関によって競売にかけられ、その売却代金は強制的にローンの返済に充当されることになります。

つまり、抵当権を設定することによって、金融機関は貸し出した資金を確実に回収でき、いわゆる「貸し倒れ」を回避できるというわけです。

ローンを借りて不動産を購入した場合は、その不動産に抵当権が付いていることを公にするための手続きとして、法務局(登記所)で「抵当権設定登記」を行わねばなりません。

抵当権設定登記の登記費用

抵当権設定登記にかかる費用は、登録免許税(登記料)と司法書士等に支払う報酬などで、具体的な金額の目安は、それぞれ次のとおりです。

・抵当権設定登記にかかる登録免許税額=住宅ローンの借入額✕0.4%

・司法書士報酬
抵当権設定登記 25,000円〜
    日当、旅費、通信費等(実費)


・その他書類収集等実費

抵当権設定登記の必要書類

抵当権設定登記には、以下の書類が必要です。

通常は金融機関側で準備するもの
  • 抵当権設定契約書
  • 司法書士への委任状
  • 会社の法人番号がわかる書類
借主側で準備するもの
  • 不動産所有者の実印
  • 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
  • 不動産の権利証(登記済証)

原則として、対象不動産の所在地を管轄する法務局で、窓口申請や郵送により抵当権設定登記申請を行います。通常は司法書士が代理で法務局に申請することがほとんどです。

登記申請後、1~2週間で登記手続きが完了します。完了したら法務局で登記事項証明書を取得し、抵当権者である金融機関に提出します。

まとめ

不動産売却時には、さまざまな登記申請が必要になります。

今回の記事をまとめると

  • 売主は不動産の売却前に抵当権抹消登記、氏名・住所変更登記が必要
  • 買主は所有権移転登記の費用負担が必要
  • 買主が不動産を購入する時にローンを利用する場合は抵当権設定登記が必要

その不動産の特性により、登記が必要な項目が異なりますので、ぜひ、今回の記事を参考にしてみてください。

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