マンション売却の確定申告|損益計算から特例・期限・方法まで完全解説

  マンション売却の確定申告|損益計算から特例・期限・方法まで完全解説

マンションを始め不動産を売却して利益が出ると税金が発生します。税金の額は確定申告で算出するのですが、そもそも確定申告をする必要があるのかと疑問に思う人もいるでしょう。結論から言うと、売却益が出ても出なくても確定申告はしたほうがいいです。

野田 真生
【執筆・監修】野田 真生

不動産会社でオウンドメディアの編集長、マーケターとして3年経験。 マーケティング業務として、ディレクション、SNSアカウント運用、YouTubeの撮影、編集、ブログの運営、記事の執筆を行っていました。

【保有資格】宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー

「マンション売却後、確定申告は必要?」

「マンションを売却したら、いつ確定申告するの?」

「マンション売却で確定申告に必要な書類は?」

マンション売却後の確定申告は、多くの方にとって面倒で難しく感じる手続きですよね。

しかし売却益が出たのに確定申告を忘れていると、延滞税などのペナルティが発生するかもしれません。

この記事では、マンション売却で譲渡益が出た場合の確定申告の必要性、必要書類、確定申告の期限、申告の流れ、税額の計算方法、さまざまな控除制度の活用方法まで、マンション売却に関する確定申告の疑問を丁寧に解説しています。

売却時の損失が出た場合の対応方法も併せて紹介しているので、マンション売却をお考えの方はぜひ参考にしてください。

マンション売却で譲渡益が出たら確定申告は必要

マンション売却で確定申告が必要な場合は「売却益が発生したとき」です。

基本的に売却益が発生しなければ確定申告をする必要はありませんが、損失が発生した場合も、確定申告することで還付金の特例などがあるためお得になる可能性があります。

サラリーマンなどの給与所得者であっても、不動産の売却益が20万円以上あった場合は確定申告が必要です。

売却益が20万円以下の場合でも、節税対策できる可能性があるため確定申告をおすすめします。

マンション売却で確定申告しないと受けるペナルティ

売却益が発生したにもかかわらず、確定申告していないと以下のような罰則が科せられます。

  • 延滞税
  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 重加算税

延滞税

確定申告を行っていても、支払期限までに税金を納めないときは延滞税が発生します。

延滞税は支払期限の翌日から納付した日までの日数に応じた期間の税金が上乗せされ、支払期限の翌日から2ヶ月が経過していると税額がさらに上がるため、なるべく早く支払ったほうがいいでしょう。

過少申告加算税

納める税金が少なかったり、還付される税金が多すぎたりする場合には過少申告加算税が課せられます。主に過少申告加算税が生じるケースは以下の通りです。

  • 税務調査を受けた後に修正申告をした
  • 税務署から申告税額の更正を受けた

過少申告加算税の税額は、新しく納める税金の10%相当です。

新たに納める税金が50万円を超えている場合には、超えている部分の15%が上乗せされるので、適正な税金を申告するようにしましょう。

無申告加算税

マンション売却で利益が出ているときに確定申告をしていないと、通常の税金に加えて無申告加算税が加算されます。

無申告加算税は納付すべき税金の50万円までが15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じた金額が本来の税金に加算されます。

ただし確定申告を忘れていたとしても、以下のケースに該当する場合は無申告加算税が課税されません。

  • 期限内に確定申告する意思があったと認められる
  • 期限後申告が、法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に行われている

追徴課税以外にも、納税期限を過ぎると特例が利用できなかったり、将来住宅ローンが組みにくくなったりするため、確定申告は忘れないように注意が必要です。

重加算税

重加算税は、上記で紹介した「過少申告加算税」か「無申告加算税」が課せられるときにおいて、意図的に税額計算を隠蔽・偽装したときに課せられます。

無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%が不足した税金に加算されます。

確定申告の時期はマンション売却の翌年

確定申告の時期は、マンションを売却した翌年の2月16日〜3月15日の間です。

2024年にマンションを売却した場合は、2025年2月16日〜3月15日の間に確定申告します。

期間内での確定申告を忘れた場合でも、自分で気がついたらできる限り早く申告するようにしましょう。

マンション売却後の確定申告で必要な書類一覧

マンション売却の確定申告では、以下の書類が必要です。

書類 入手方法など
売却したマンションの謄本 法務局で取得する
除票区民票 売却物件があった自治体で取得する
売却時の売買契約書の写し※ マンション売買契約時に渡される
購入時の売買契約書の写し※ 売却するマンションを購入契約した時に渡されている
仲介手数料や印紙代などの金額が分かる書類※ マンション売買契約時に渡される
譲渡所得証明書 国税庁のHPから取得可能・印刷して必要箇所を記入して提出する

※印の書類はなくても確定申告できますが、経費の計上ができず、売却価格がそのまま利益として扱われてしまうため、価税対象額が大幅に増えます。仲介手数料などの経費を正しく計上すると、課税対象額を減らせるので、節税につながります。

マンション売却後の確定申告の流れ

確定申告は以下の流れで行います。

  • 確定申告書を作成
  • 税務署に提出・納税

確定申告書を作成

確定申告する前に「マンション売却後の確定申告で必要な書類一覧」で紹介した書類を集めて、「確定申告書」を作成します。

申告書の作成方法は国税庁の確定申告書等作成コーナーにあるご利用ガイドを参考に作成しましょう。

自分で作成するのが難しい場合は確定申告の時期に税務署に出向くことで、職員と一緒に作成できます。

税務署に提出・納税

確定申告書が作成できたら、税務署に提出して、売却益に応じた所得税を支払って終了です。

税務署への提出方法はいくつかあり、税務署で直接提出するやり方や郵送、e-taxというサービスを使ってネット上で提出する方法があります。

マンション売却で譲渡損失が出た場合、還付を申請できる可能性があります。

還付はマンション売却の翌年1月1日から5年間申請可能です。

詳しくは「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」で解説します。

マンション売却における譲渡所得の税率は所有期間によって異なる

マンション売却で得た利益は「譲渡所得」といい、この譲渡所得に税率を乗じて所得税額が決まります。

不動産の場合は所有期間によって以下のように税率が変わります。

  • 短期譲渡所得:39.63%(所有期間が5年未満)
  • 長期譲渡所得:20.315%(所有期間が5年を超える)

売却した年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えると長期譲渡所得、5年未満だと短期譲渡所得となります。

マンション売却の税額の算出方法

マンション売却の税額を算出する流れは、以下の通りです。

  • 譲渡価格を算出する
  • 経費や取得費を算出する
  • 譲渡費用を算出する
  • 税額を算出する

譲渡価格を算出する

まず税額を調べるために「譲渡所得」を算出します。譲渡所得は以下の計算で求められます。

譲渡所得 = 譲渡価格 – 取得費 – 譲渡費用

上の計算で譲渡所得がプラスになっていれば確定申告が必要になります。譲渡価格については以下で算出します。

減価償却費相当額 = マンションの売却価格 + 固定資産税清算金(+都市計画税清算金)

マンション売却価格はそのままマンションを売ったときの金額です。固定資産税清算金と都市計画税清算金は「売主が前払いで納税した固定資産税・都市計画税を日割りして計算した金額」です。

マンションの売却価格から清算金を引くと譲渡価格になるので、これを譲渡所得の計算に当てはめましょう。

経費や取得費を算出する

次に譲渡所得を算出するために、取得費に当たる部分を計算します。

取得費は売却したマンションを取得するのにかかった費用です。

マンションを取得するためにかかった費用から減価償却費相当額を引いて取得費を出します。

取得費 = マンションを取得するのにかかった費用 – 減価償却費相当額

減価償却費相当額は以下の式で算出します。

減価償却費相当額 = 建物購入価格 ✕ 0.9 ✕ 償却率 ✕ 経過年数

償却率は以下の数値を当てはめます。

素材 償却率
鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超) 0.02
鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025
鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036
鉄筋コンクリート造または
鉄骨鉄筋コンクリート造
0.015

例えば、鉄筋コンクリート造のマンションを15年前に4,000万円で購入して、建物部分の費用が2,000万円だった場合は、減価償却費相当額は以下の通りです。

「2,000万円 ✕ 0.9 ✕ 0.015 ✕ 10 = 270万円」

譲渡費用を算出する

譲渡所得 = 譲渡価格 – 取得費 – 譲渡費用

上で紹介した3つの費用を当てはめて譲渡所得を算出します。

税額を算出する

譲渡所得がプラスであれば課税されますが、上記で解説したとおり税率はマンションを所有していた期間によって変化します。

  • 短期譲渡所得:39.63%(所有期間が5年未満)
  • 長期譲渡所得:20.315%(所有期間が5年を超える)

譲渡所得が200万円で、購入した10年後に売却する場合の譲渡所得税は、以下のようになります。

「200万円 ✕ 20.315% = 40.63万円」

最終的な所得税額は40.63万円なので、期限内に納付するようにしましょう。

マンション売却後の確定申告で活用できる控除

マンションを売却して利益が出ると所得税の支払いが必要です。

しかし特例や控除を活用すると支払わなければいけない税金を少なくできたり、損失の穴埋めができたりします。

マンション売却後の確定申告で活用できる控除は、代表的なものは以下の6種類です。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 特定の居住用財産の買換えの特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は、マイホーム(居住用財産)を売ったとき、所有期間の長さに関係なく譲渡所得から3,000万円まで控除を受けられるものです。

利用するためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでる家屋か家屋付き土地を売ること
  • 以前住んでいた家屋か家屋付き土地を売る場合は退去から3年目の年末までに売却すること
  • 住んでいた家屋や住まなくなった家屋を取り壊した場合は以下の条件を満たすこと
    ①家屋を解体した土地の売買契約が解体から1年以内、かつ退去から3年後の年末までに売却すること
    ②家屋解体から譲渡契約締結まで、敷地を貸駐車場などに使用しないこと
  • 売った年の前年・前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例を受けている場合を除く)
  • 売った年、その前年、前々年にマイホームの買い替えやマイホームの交換の特例を受けていないこと
  • 売った家屋や敷地などについて、収容等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
  • 売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないこと

参考:国税庁|マイホームを売ったときの特例

特定の居住用財産の買換えの特例

「特定の居住用財産の買換えの特例」は、特定のマイホーム(居住用財産)を売り、代わりのマイホームに買い換えたときは、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられるものです。

将来、再度マイホームを売却して譲渡益が出ると、今回の譲渡益が合算されて課税対象になります。

この特例を利用するには「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と同じような条件に加え、売却代金が1億円以下であるなど、様々な条件があるので、国税庁のホームページで確認しましょう。

参考:国税庁|特定のマイホームを買い換えたときの特例

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋またはその敷地を、平成29年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の条件を満たしている場合、譲渡所得金額から最高3,000万円まで控除できる制度です。

この特例を受けるには以下の3つの条件がすべて当てはまる必要があります。

  • 昭和56年5月31日以前の建築
  • 区分所有建物登記がされている建物
  • 相続開始直前に被相続人以外が居住していなかった

条件については国税庁のホームページで確認しましょう。

参考:国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」は、相続または遺贈によって取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合、相続税のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。

この特例を受けるための要件は以下のとおりです。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  • 取得した人に相続税が課税されていること
  • 相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡すること

参考:国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、住宅ローンの残債があるマイホームを売却した際、売却価格がローン残債を下回ってしまった場合に利用できる制度です。

条件を満たしていれば、その損失分をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。

控除しきれなければ以降3年間、引き続き繰越控除が受けられます。

日本国内で自分が住んでいたマイホームであることなど、条件が複数あるので国税庁のホームページで確認が必要です。

参考:国税庁|No.3392 「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、5年以上住んでいたマイホームを買い換えた際、損益が発生したときは、条件を満たしていれば、その損失分をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できるものです。

控除しきれなければ以降3年間、引き続き繰越控除が受けられます。

自分が住んでいる、または住まなくなってから3年以内であることなど、複数の条件があるので国税庁のホームページで確認しましょう。

参考:国税庁|№3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

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まとめ

この記事ではおもに、以下の内容を解説しました。

  • マンション売却後は売却益が出ていなくても確定申告をした方がいい
  • 売却益が出た場合、3,000万円特別控除をはじめ、いくつかの特例控除を利用できる可能性がある
  • 確定申告の納付期限を過ぎると延滞税が発生し、通常よりも高い税金を払わなければいけなくなる

マンションの売却後、確定申告するのは翌年2月15日以降のため忘れがちですが、給与所得がある方も売却により損失が出た方も、確定申告は忘れずにしましょう。

不動産の売却益は、給与所得とは別に申告が必要ですし、損失があった場合も還付申告できるケースもあるからです。

この記事を参考にしていただくことで、マンション売却後の確定申告についての理解が深まり、確定申告がスムーズにできると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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