【アパート経営の利回り最低ラインは?】表面利回り、実質利回りの計算方法

  【アパート経営の利回り最低ラインは?】表面利回り、実質利回りの計算方法

アパート利回りの最低ラインは表面利回りが5%、実質利回りが3%と言われています。本記事ではそれぞれの利回りの計算方法、不動産投資に失敗しないためのポイントなどを詳しく解説していきます。

手塚 大輔
【執筆・監修】手塚 大輔

地方銀行に10年弱勤務した後、現在は飲食店を起業しており、プロのライターとしてもSEO記事、コピーライティングなどを行なっております。 銀行では、預金業務、カードローン、住宅ローン、企業の運転資金、設備資金、起業開業支援、保険販売、投資信託販売などの他、企業の決算書の審査など経験。

【保有資格】ファイナンシャルプランナー

※この記事はPRを含みます。

アパート経営をする際に、その物件への投資の価値があるかどうかを判断する重要な指標が利回りです。

しかし「どの程度の利回りの物件を購入するのが適正なのか」について分からない問い方も多いのではないでしょうか?

利回りは4%〜8%程度が適正だと言われますが、物件の状態や地域によって異なります。

アパート経営を始める前に適正な利回り相場、利回りを確認する際の注意点などについて理解しておいた方がよいでしょう。

この記事ではアパート経営における利回りの相場について詳しく解説します。

アパート経営の利回りの目安

アパート経営における利回りとは、家賃収入が物件価格の何%なのかということです。

例えば、初期投資5,000万円のアパートから、年間の家賃収入が500万円あれば、利回りは10%です。

物件価格の10%が家賃収入になるので、10年で投資金額を回収できることになります。

利回りはどの程度の投資効果があるのかを知るための分かりやすく重要な指標です。

まずは利回りの相場について詳しく解説していきます。

表面利回りは5%、実質利回りは3%が最低ライン

一般的にアパートを土地と一緒に購入する際の表面利回りの理想は8%以上と言われます。

経費も加味した実質利回りになると、4%〜7%程度となるので、基本的には5%〜8%程度が利回りの理想としておくとよいでしょう。

なお、利回りの最低ラインは表面利回りが5%、実質利回りが3%程度と言われています。

これらを下回る利回りの物件へ投資をすることは避けたほうがよいでしょう。

中古と新築で利回りの目安は異なる

中古物件は新築物件よりも価格が安くなるので、利回りは高くなる傾向があります。

築年数別の利回りの目安は次のとおりです。

築年数 表面利回り
築10年以下 7%程度
築10年~20年 7%~8%程度
築20年以上 10%程度

一方、新築物件の場合には、表面利回り8%程度で、実質利回りは4%〜6%程度となります。

中古物件の方が表面利回りは高くなる傾向があるので、物件を探す際には、「新築物件よりも利回りが高いのか」という点を重視して選択することが重要です。

アパートの広さや地域で利回りの目安は異なる

アパートの広さや地域によっても利回りの目安は異なります。

日本不動産研究所の「不動産投資家調査(2020年4月現在)」によると地域別の表面利回りをワンルームとファミリー向けで分類した場合、次のようになります。

地域 ワンルーム ファミリー向け
札幌 5.50% 5.60%
仙台 5.50% 5.70%
さいたま 5.20% 5.30%
千葉 5.20% 5.40%
東京(城南地区) 4.20% 4.30%
東京(城東地区) 4.50% 4.50%
横浜 4.90% 5.00%
名古屋 5.00% 5.20%
京都 5.20% 5.30%
大阪 4.80% 5.00%
神戸 5.20% 5.30%
広島 5.70% 5.80%
福岡 5.10% 5.20%

地方の方が物件価格が安いため、利回りが高くなる傾向があります。

また、ワンルームよりもファミリー向けの方が若干利回りは高くなります。

ただし、都市部と地方では物価が異なり、空室率も異なるので、利回りだけ単純に比較するのではなく、実際に空室率等も加味した上で投資した物件を決めるべきでしょう。

あくまでも利回りは物件選びの目安とするとよいでしょう。

アパート経営の利回りはどれくらいが適切?利回りを上げる方法も紹介!「イエウール土地活用」

利回りの計算方法とシミュレーション

利回りを計算できるよう、計算方法と、物件価格から利回りがいくらになるのかのシミュレーションをしていきましょう。

3つの利回りの計算方法

アパート経営における利回りには次の3つの指標があります。

利回り 内容 計算方法
表面利回り 投資額に対する年間家賃収入の割合 年間賃料収入÷投資額
想定利回り 満室になった状態での投資額に対する年間家賃収入の割合 満室時の年間家賃収入÷投資額
実質利回り 投資額に対する経費も加味した年間純収益の割合 (年間賃料収入-年間経費)÷投資額

表面利回りは投資対象の候補となる物件を比較するときの指標となります。

想定利回りは最大利回りを把握でき、実質利回りは経費を加味してどの程度の利回りになるのかを把握するために重要な指標です。

アパート経営における利回りのシミュレーション

実際に次の条件で、3つの利回りをシミュレーションしていきましょう。

投資額:1億円
満室時の家賃収入:1,000万円
現在の家賃収入:800万円
年間経費:200万円

この場合の3つの利回りを算出すると以下のようになります。

表面利回り:800万円÷1億円×100=8%
定利回り:1,000万円÷1億円×100=10%
実質利回り:(800万円–200万円)÷1億円×100=6%

表面利回りは物件と物件を比較するのに役立ちますが、購入前には必ず実質利回りを計算し、手元にいくらのお金が毎年残るのか、また、何年で投資額を回収できるのか把握しておきましょう。

オススメ記事

初めての不動産投資、何を買うべき?購入物件で未来が決まる!

会社員の副業としても人気がある不動産投資。しかし、初めての不動産投資となると知らない情報もたくさんあり、混乱してしまうという方も多いです。そこで今回は初めての不動産投資という観点から、ひとつめの物件の選び方のポイントをご紹介していきます。

記事を見る

新築アパートの利回り相場

【詳しく解説】アパート経営の利回り最低ラインは?地域別の平均利回りと計算方法

新築アパートの利回りは、建築価格と地域によっても異なります。

新築アパートの利回りがどの程度なのか、詳しく解説していきます。

建築費の相場

新築アパートの建築費は建物の構造によって次のように異なります。

構造 2階建て 3階建て
木造 75万円~95万円/坪 80万円~100万円/坪
軽量鉄骨造 85万円~100万円/坪 (軽量鉄骨)90万円~105万円/坪
(重量鉄骨)90万円~115万円/坪
鉄筋コンクリート造 90万円~110万円/坪 100万円~120万円/坪

新築アパートは2階建ての軽量鉄骨造で建てられることが一般的で、この際は「坪単価90万円」が1つの目安と言われます。

そのため、新築アパートを建てる際には坪90万円程度を目安として建築費を決めるとよいでしょう。

表面利回りの相場

新築アパートの利回りも地域によって異なります。

全国賃貸管理ビジネス協会は利回り相場をまとめており、「2021年01月の家賃動向」によると、新築アパートの表面利回りは地域ごとに以下のようになっています。

地域 賃料/坪 表面利回り
東京 7,187円/月
86,243円/年
9.60%
神奈川 6,222円/月
74,669円/年
8.30%
大阪 5,703円/月
68,436円/年
7.60%
愛知 4,597円/月
55,164円/年
6.10%
千葉県 4,911円/月
58,930円/年
6.50%
北海道 4,829円/月
53,028円/年
5.90%

物価の高い首都圏の方が家賃が高いので、表面利回りは高額になります。

建築価格にそれほど地域差はないので、土地を所有している方であれば、都市部の方が高い利回りで運用できるでしょう。

オススメ記事

2025年問題と不動産価値の関係性!投資と売却の判断基準を専門家が解説

団塊世代が75歳となり、高齢化社会にさらに拍車がかかるとされている2025年問題。一見不動産とは関係ないと思われがちですが、本記事では2025年問題がもたらす不動産業界への影響を解説していきます。

記事を見る

アパートの経営で利回りを上げる方法4選

アパート経営で利回りを引き上げるには次のような方法があります。

  • 駐車場・駐輪場の賃料をとる
  • 管理費を見直しコストを下げる
  • 部屋をホームステージングしてポータルサイトに掲載する
  • 部屋の設備を入れ替えて付加価値を上げる

入居率をあげるために、家賃を引き下げるのは最終手段です。

その前に少しでも高利回りのアパート経営にするための4つのポイントについて詳しく解説していきます。

駐車場・駐輪場の賃料をとる

駐車場や駐輪場を貸し出して、賃料を取りましょう。

入居者から賃料を取ることによって、入居者1人あたりの賃料収入が大きくなるので、利回りは上昇します。

ただし、入居者の負担が多くなることによって、入居率が下がるリスクもあるため、周辺物件と比較した上で、駐車場や駐輪場の賃料を設定するか決めましょう。

土地が余っているのであれば、駐車場だけで入居者以外にも貸し付ける方法もあります。

管理費を見直しコストを下げる

管理会社と交渉して管理費を見直すことでコストを下げれば実質利回りは向上します。

管理内容を見直し、不要な契約やオーナー自らで管理できる部分はカットしましょう。

また同様に保険内容もチェックして、不要な特約や補償がないかも確認し、削れる内容があるのであれば削っていきましょう。

部屋をホームステージングしてポータルサイトに掲載する

ホームシーリングとは、部屋に家具や小物を配置してモデルルームのようにすることです。

ホームシーリングした部屋の写真をポータルサイトに掲載することで、物件の印象はよくなりますし、内覧に来た人はより具体的に新生活をイメージできるようになるので空室対策には効果的です。

ホームシーリングをおこなう専門業者もあるので、コーディネートに自信がない方は相談してみましょう。

部屋の設備を入れ替えて付加価値を上げる

部屋に人気の設備を導入することで、部屋の付加価値をあげることで入居率や家賃のアップに繋がります。

  • オートロック
  • 防犯カメラ
  • 浴室乾燥機
  • 宅配ボックス

これらの設備を導入するだけで、部屋の価値が高まるので入居者を集められる可能性があります。

防犯カメラや宅配ボックスなどは比較的安価に設置できるので、導入を検討するとよいでしょう。

オススメ記事

東京23区の中古マンション平均価格は?住みやすくおすすめのエリアをご紹介!

本記事では、東京23区の中古マンション平均価格についてご紹介しつつ、将来性はあるのかどうか、住みやすさはどうかといった観点についても解説していきます。おすすめエリアも合わせてご紹介していきますので住み替えを検討している方などはぜひ参考にしてみてください。

記事を見る

利回りを確認する際の注意点

利回りを確認する際には以下の5点に注意してください。

  • 実質利回りで計算する
  • 物件購入後の修繕費を考慮する
  • 空室を考慮して利回りを計算する
  • 金利上昇時を考慮する
  • 家賃下落時を考慮する

今の家賃や入居状況がそのまま継続するわけではないので、将来的なリスクも考慮した上で利回りを計算することが重要です。

物件の利回りを確認する際の注意点を解説していきます。

実質利回りで計算する

物件を選択する際には、実質利回りで計算してください。

表面利回りだけ見ても、経費が加味されていないので、投資後には赤字になってしまうというケースは少なくありません。

特に不動産会社の広告は表面利回りが掲載されているため注意が必要です。

表面利回りは物件を比較する際に使用し、実施に物件を絞り込んだら、実質利回りを算出し、どの程度のお金が手元に残るのか、投資金額を何年で回収できるのか確認してください。

物件購入後の修繕費を考慮する

物件購入後にはさまざま修繕が必要になります。

  • 5年に1回の修繕:エアコンや内装などの軽いメンテナンス
  • 10年に1回の修繕:外壁・屋根材・水回りの大きな部分の入れ替えやメンテナンス

このように、物件購入後は定期的にメンテナンスや修繕によって現金が必要になります。

毎月の家賃収入と運営経費だけでなく、数年に1回の修繕費用が発生しても、キャッシュフローが黒字になるのかを考慮した上で投資物件を選定しましょう。

空室を考慮して利回りを計算する

利回りは必ず空室を考慮して計算してください。

不動産会社は満室想定の利回りである想定利回りを広告している場合もありますが、想定利回りだけで投資物件を決めるのはリスクが非常に高くなります。

空室率は現在の空室数と、空室期間を使用して以下のように自分で計算します。

空室率=(空室数×空室期間)÷(全体の室数×12ヶ月)×100

例えば、総戸数15戸の建物が、5部屋空室で、5部屋全てが満室になるまで5ヶ月かかる場合の空室率は以下の通りです。

(5部屋×5ヶ月)÷(15室×12ヶ月)×100=13.8%

空室率を考慮した実質利回りは次のように計算します。

空室率を入れた実質利回り(%)=(年間収入-年間必要経費)×(100%-空室率)÷(物件価格+購入時諸経費)×100-空室率

以下の事例で、空室率を考慮した実質利回りを計算します。

投資額:1億円
満室時の家賃収入:1,000万円
現在の家賃収入:800万円
年間経費:200万円
空室率:13.8%

空室率を入れた実質利回り=(800万円-200万円)×(100%-13.8%)÷1億円×100=5.17%

空室率を考慮しなければ、実質利回りは6%ですが、空室率を考慮した場合には、5.17%へと減少します。

アパートには必ず空室が存在しますので、利回り計算の際には空室率も考慮しましょう。

金利上昇時を考慮する

実質利回りには、利息の支払い分が加味されますが、固定金利で借りている場合以外には、金利上昇時も考慮しましょう。

ある程度金利が上昇した際の利払いがいくらになるのかを考慮して、実質利回りも計算しておくとよいでしょう。

なお、金利上昇時には次のような対策で、金利上昇分の負担を抑えられる可能性があります。

  • 固定金利に切り替える
  • 金利の安いローンへ借り換える

なお、ローンを返済できない場合には、物件を手放さなければならない可能性もあります。

そのため、金利が上昇した時にも無理なく返済できるような返済計画を立てておくことが重要です。

家賃下落時を考慮する

家賃下落も考慮して、収支計画を立てるようにしましょう。

建物が古くなれば、自ずと家賃は下落します。

なお、総務省の調査では、平均的な家賃下落率は年1%と言われています。

10年では10%下落するので、10年後に家賃が10%下がった場合にも、収支を維持できるのか、5年、10年、15年、20年、25年、30年程度のスパンで、収支計画や利回りを計算しておきましょう。

借家家賃の経年変化について

オススメ記事

東京23区の新築マンション平均価格は?年収別おすすめエリアもご紹介!

本記事では、東京23区の新築マンション平均価格についてご紹介しつつ、将来性はあるのかどうか、住みやすさはどうかといった観点についても解説していきます。年収別のおすすめエリアも合わせてご紹介していきますので住み替えを検討している方などはぜひ参考にしてみてください。

記事を見る

まとめ

アパート経営の利回りの最低ラインは表面利回りで5%、実質利回りは3%です。

不動産価格や建物の建築価格が上昇している中、高い利回りの物件を探すことは簡単ではありません。

しかし最低ラインを下回る物件へ投資してしまったら、将来的にローン返済が危うくなるリスクがあるので、必ず最低ラインをクリアしている物件を選択しましょう。

なお、不動産会社が表示している利回りは、表面利回りか推定利回りです。

経費が加味されていない利回りですので、自分で実質利回りを計算するとともに、空室率や将来の金利上昇、家賃の下落も加味した上で、投資の意思決定をおこなうようにしてください。

参考:アパート経営の利回りはどれくらいが適切?利回りを上げる方法も紹介!「イエウール土地活用」

関連記事

注目ワード

Top